まりあの試験日記




          医療事務編




パパさんのクリニックの開業の準備に追われていた平成17年の10月のこと。
それまでは開業準備やスタッフの研修ばかにり気を取られ医療事務のことなど忘れていて
オープンまで時間がないときに そのことに気付いたのです。

クリニックや病院などは患者さんを診察すると患者さんから(保険によりますが)
診療報酬の3割を窓口で頂きます。
あとの7割は患者さんが属する保険機関から振り込まれます。
その7割を請求するためには
患者さん1人あたり1枚の診療報酬明細書(以下レセ)を作らなければなりません。
それを請け負うのが医療事務の仕事の1つです。

当クリニックは医事コンピューター(以下レセコン)を導入していますので
カルテ管理や窓口会計はPCで処理できます。
IT化が進む前はドクターが書いたカルテを基に その診療内容から診療報酬を計算し
その患者さんの1ヶ月分の診療内容を点数化して レセに書き出すと言う作業をしていました。
提出、請求したレセが もし保険機関の審査で内容に間違いが見つかれば
そのレセは返戻となり診療報酬は入金されないので これは大切でそして気を使う仕事です。

また レセコンだからと言ってPCから打ち出されたレセが全て正しいとは限らず
傷病名の記載漏れや保険の入力ミスなどもあり 内容点検も重要な仕事になっています。

1ヶ月の患者さんのレセはクリニックによっては数十枚から数百枚以上になります。
それを全て保険種ごとに計算し 順番に束ねることを総括と言い
クリニックの開業当初 私はこれに一番戸惑いを覚えました。
国民保険社会保険ぐらいしか知らなかったのですが その中にも色々な種類があり
保険者番号の意味を把握してないとできない作業でした。

初めはレセコンのメーカーさんから指導を受けながら作業しましたが
サポートは3回までと決まっていたので
先行きに不安を感じた私は医療事務の勉強をすることにしました。

ここから半年間、私の苦悩が始まりました…。




私は医療関係講座では大手のN学館の通信生となり 歯科専門の医療事務の勉強が始まりました。
医療保険制度や保健医療担当規則の勉強に
事務の基礎知識、麻酔や薬価の計算法
そして何よりも治療の点数算定に泣かされました。

歯科の医学知識の基礎から始まり解剖学、
傷病名や治療の流れから専門用語まで学ぶのです。
この傷病名だとこの治療の流れで この時のこの処置は算定出来ないとか出来るとか…。

例えば傷病名pulの場合
P,EXT→根貼→根充(G加圧)→失PZ の順に
治療は進むと言う感じで治療の流れを覚えて行き点数化して計算していきます。

画像は練習用のカルテ記載ですが
丁寧なカルテ記載ばかりでなく
雑に書かれたカルテだと 治療の流れや解剖学など学習のすべてを理解出来てないと 点数化出来ないようなものまでありました。

傷病名も多岐にわたり 全ての治療の流れを覚え
ブリッジや義歯まで学ぶことに 戸惑いもありました。

私の場合 パパさんが歯科医であったので
わからない事はN学館に質問するよりも早く解決することができ
教科書よりも詳しく説明してもらえた点では 
他の生徒よりも恵まれていたと思います。
ただ 年齢のせいなのか覚えても覚えても次の日にはもう忘れてる…なんてことは頻繁で
特に吸入麻酔薬の計算法をどうしても覚えられなくて ホント泣けてきました。




通常 医療事務講座は半年間程で終了します。
その間に3回のテストを受け合格すれば終了証書をもらえ講座は終わります。
ここで終わらせてもいいのですが 私はこの上の段階である医療事務技能試験合格を最終目標にしていました。

上段でも書きましたがIT化が進み医療事務の業務も以前とは随分内容に変化があり、 ドクターが書いたカルテから手書きでレセを作成することが少なくなったので、 医療事務講座の講義内容も大きく変わる時期に私は受講生になりました。

私が受けた講義は以前からある「カルテからレセを作成する」ことを主としていましたが、 半年後の終了の頃はレセコンで作られたレセの点検業務を主とした講義内容になっていました。

そのため医療事務技能試験の内容にも変更があり
私が受ける技能試験を最後に手書きでのレセ作成の試験が終わることになっていました。
半年間 レセ作成を主に勉強してきた私にとって試験内容の変更は大きな壁になります。
なにがなんでも技能試験は1発合格を目指さなければなりませんでした。




高校中退の私が最後に受けた試験は自動車免許の試験ぐらい。←もう随分前の話だ
そんな私がこの年齢でうける医療事務技能試験…当日 そりゃー緊張しました。
受験生は皆女性でそれも若い子ばかり…こんなおばさんは数名の中での試験。
ここで私は生まれて初めて「頭真っ白」状態を体験しました(笑)

試験は「実技(窓口担当者としての理解)」「学科」「レセ作成2枚」で3時間の試験でした。
実技と学科は自分でも手応えがあったと思ったのですが 問題はレセ作成でした。
点数計算に電卓を使用するのですが 周りの受験者の電卓をたたく音に自分が焦り始めたのです。
限られた時間内での作成なので皆すごい勢いで電卓をたたいて行きます。
その勢いに圧倒されてしまって ここで頭真っ白になってしまいました。
試験中に「焦るな、ゆっくり、大丈夫大丈夫…」と自分で自分に言い聞かせるなんて初めての事でした。
残りの試験時間が気になり始めた頃 前の席の受験生はもう終わった様子で
私はと言えばまだ残りがある。
明らかに練習不足、勉強不足…なかばあきらめの心境でした。
それでもとにかく最後まで…と時間目一杯使っても レセは完成せず見直しも出来ないままでした。
意気消沈とはこのことだな…と思いました。
その日 パパさんから聞かれ
「多分ダメだと思う。最後の1枚の数段が手つかずで終わってる。勉強不足だわ…」
「手つかずがあるのは致命傷だな」と言われ やっぱりな…と落ち込んだものです。


しばらくして審査委員会から郵便が届きました。
不合格の通知だろうと思って開封してみれば合格の2文字。
驚きましたねーっ。(笑)
もう絶対にダメだと諦めていたのですから…。
海斗は「僕は0点だと思ってたよ」なんて言うし(笑)
パパさんまで「あの程度の勉強で受かるんか?」と。
なんとでも言ってください、ちゃんと合格したんですから。(笑)

レセ作成は本当に難しいものでした。
自分でも最後まで完成出来なかったのは失敗だったと思っています。
各科200点満点で合格ラインは140点。
運も見方したんでしょう。

「メディカルクラーク」とは秘書的センスを持った医療事務技能者を意味し
技能審査試験に合格することによって診療報酬請求事務技能と、
秘書的な患者接遇技能を合わせ持つことが認定されます。

私はここまで素晴らしくはないですが 一応メディカルクラークらしいです。(笑)


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